【倒産体験記】⑦倒産から1週間

倒産体験記

あの日から一週間

あの日から、もう一週間が経った。

嘘みたいに濃い一週間だった。

社内の空気は少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるけれど、どこか現実味がなく、まるで別の会社に勤めているような感覚だった。

この一週間は、とにかく“対応、対応、また対応”。仕入先への説明、得意先への謝罪、なぜか監査法人や弁護士への資料提出まで、気づけば私は「なんでも屋」みたいな立ち位置になっていた。

そういえば、倒産発表の数日前に、監査法人から私宛に電話があった。あの時点で、もうストーリーはできあがっていたのだろう。私たちはその筋書きの中で、知らず知らずのうちに動かされていたのかもしれない。

幸いだったのは、取引先の多くが「今までどおり付き合うよ」と言ってくれたこと。

これには本当に救われた。

損害を被った仕入先にも頭を下げに行ったが、“前払いなら納品します”と条件付きながら取引継続を了承してくれた。

ありがたい話だ。

不便だけど、それでも前に進めるという事実が心強かった。

そんな中、弁護士から新しい銀行口座の通帳を渡された。聞いたこともないような新興銀行。

「主要取引銀行はすべて凍結されていますので」と言われ、

見ると、通帳の開設日は一ヶ月前。

――つまり、すでにこの日を想定して動いていたということだ。

なんとも言えない気持ちになった。

振り込みはネットバンキングではなく、わざわざ窓口に出向いて行うスタイル。

雑居ビルの一室が“銀行窓口”になっていて、インターホンを押すと、奥から担当者が出てくる。客は私ひとり。どこかの秘密組織みたいだ。

「本日、お手続きできません」

端末の画面に何か表示されたのだろう。担当者が困ったように私を見て、

「申し訳ございません」と繰り返すばかり。

弁護士へ相談

仕方なく弁護士に連絡すると、

数分後に「もう大丈夫です」と即答。

末端まで話が通っていなかったらしい。

弁護士の一言でシステムが動く――そんな不思議な世界。

再び窓口を訪ねると、今度はあっさり振り込み完了。それだけのことなのに、なぜかひとつの山を越えたような気分になった。

まだまだ先は見えない。

でも、“会社が続いている”というだけで、それはもう奇跡みたいなことなのかもしれない。

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