あの日から一週間
あの日から、もう一週間が経った。
嘘みたいに濃い一週間だった。
社内の空気は少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるけれど、どこか現実味がなく、まるで別の会社に勤めているような感覚だった。
この一週間は、とにかく“対応、対応、また対応”。仕入先への説明、得意先への謝罪、なぜか監査法人や弁護士への資料提出まで、気づけば私は「なんでも屋」みたいな立ち位置になっていた。
そういえば、倒産発表の数日前に、監査法人から私宛に電話があった。あの時点で、もうストーリーはできあがっていたのだろう。私たちはその筋書きの中で、知らず知らずのうちに動かされていたのかもしれない。
幸いだったのは、取引先の多くが「今までどおり付き合うよ」と言ってくれたこと。
これには本当に救われた。
損害を被った仕入先にも頭を下げに行ったが、“前払いなら納品します”と条件付きながら取引継続を了承してくれた。
ありがたい話だ。
不便だけど、それでも前に進めるという事実が心強かった。
そんな中、弁護士から新しい銀行口座の通帳を渡された。聞いたこともないような新興銀行。
「主要取引銀行はすべて凍結されていますので」と言われ、
見ると、通帳の開設日は一ヶ月前。
――つまり、すでにこの日を想定して動いていたということだ。
なんとも言えない気持ちになった。
振り込みはネットバンキングではなく、わざわざ窓口に出向いて行うスタイル。
雑居ビルの一室が“銀行窓口”になっていて、インターホンを押すと、奥から担当者が出てくる。客は私ひとり。どこかの秘密組織みたいだ。
「本日、お手続きできません」
端末の画面に何か表示されたのだろう。担当者が困ったように私を見て、
「申し訳ございません」と繰り返すばかり。
弁護士へ相談
仕方なく弁護士に連絡すると、
数分後に「もう大丈夫です」と即答。
末端まで話が通っていなかったらしい。
弁護士の一言でシステムが動く――そんな不思議な世界。
再び窓口を訪ねると、今度はあっさり振り込み完了。それだけのことなのに、なぜかひとつの山を越えたような気分になった。
まだまだ先は見えない。
でも、“会社が続いている”というだけで、それはもう奇跡みたいなことなのかもしれない。
